胴や鏡板に設ける穴の検討はどうやってやる
本記事では圧力容器の胴や鏡板に設けるノズルなどの穴補強の検討の仕方について解説します。圧力容器の設計の経験のない方でも分かりやすいようにできるだけ簡単に説明しますので、是非ご覧ください。
穴補強の検討が必要な穴とは?
圧力容器にはノズルなどの穴が存在します。当然ながら穴が開いている部分は、ほかの穴が開いていない部分と比べて強度が劣ってしまいます。そのため、穴が開いていても十分な強度が確保できていること、もし強度が足りない場合は、補強を設けることで強度を持たせることが必要となります。では圧力容器に設けられる穴はすべて穴補強が必要なのか?と言われるとそうではありません。JIS B 8265では以下のような穴については穴補強が必要ないとされています。
上記はいずれも単独の穴(複数の穴が隣接していない)の場合で、円形以外の平板の場合は最小スパンの1/4以下の直系の穴、という規定があります。
穴補強に必要な強め材の最小面積は?
穴補強の考え方は、穴を横方向からの断面で見たときに、穴が開いている箇所に本来あったであろう胴や鏡板の断面積をほかで補おうという考え方です。
下の図をご覧ください。この図はノズルの穴を横から見た断面図です。肉厚tの胴又は鏡板にノズルが設けられて穴が開いていることが分かります。穴によって失われた断面積は図のAの部分に該当します。このAの断面積をほかの部材で補強してやる必要があります。

このAの断面積を式に表すと以下のようになります。(内圧に対する補強の場合)
一方で外圧に対する補強の場合はさきほどの式によって算出した最小面積の50%となります。
穴補強の要否の検討
前項で穴補強に必要な強め材の最小面積についてはお判りいただけたかと思います。では次にその穴に追加の強め材が必要かどうかを考えます。強め材とは開口部の剛性に低下を補うためのもので、胴又は鏡板やノズルネックの厚さで計算厚さを超える部分の面積(A1およびA2の部分)や管台内側の面積(A3部分)、管台の溶接部の面積(A41の部分)が強め材としてカウントされます。これらの面積の和(=A1+A2+A3+A41)がA以上であれば、強め材(A5の部分)は不要となります。一方で逆に強め材が必要となった場合は、適切なサイズの強め材を設けなければなりません。
強め材として算入できる補強の有効範囲について
上記の計算の結果、強め材が必要です!となった場合、どのような強め材を設ければよいのでしょうか。不足する断面積を補うのに十分な大きさの強め材となるリング状の板を管台の周囲に設ければよいのですが、その際に注意しなければならないことがあります。それは、強め材として算入できる補強の有効範囲には制限がある、ということです。その有効範囲を超えた部分については強め材としてカウントされないのです。その有効範囲というのが、図の二点鎖線で示した枠内のことで、上図の横方向(穴の径の方向)は穴の中心線から片側にd(穴の半径)又はRn+t+tn(管台の内径+胴又は鏡板の厚さ+管台の厚さ(※いずれも腐れ後の厚さ))のいずれか大きな値になります。一方、上図の縦方向(管台の長手方向)は管台外側方向には2.5t(胴又は鏡板の厚さの2.5倍)又は2.5tn+te(管台の厚さの2.5倍+強め材の厚さ)のいずれか小さい値、管台内側方向には2.5t(胴又は鏡板の厚さの2.5倍)又は2.5ti(管台内側の厚さの2.5倍)のいずれか小さい値となります。この有効範囲を超える部分にいくら強め材を設けても補強としては意味がありませんので、強め材のサイズを決める際は注意が必要です。
まとめ
今回は圧力容器に設ける穴の補強の検討について解説しました。JISをご覧いただければわかるかと思いますが、各部分の断面積を求める式がびっしりと書かれてあり、見るのが嫌になりますが、順を追って見てみると実は大したことは書かれていないことが分かるかと思います。やっていることは単純明快で穴が開いたことで失われた断面積をほかで補ってやろうという考えです。(このような考え方を面積補償法というそうです)
以上、穴補強の検討の順序を簡単にまとめると以下のようになります。
①穴を設ける胴又は鏡板の計算厚さ(溶接効率η=1で鏡板はそれぞれ独特な計算をする必要があるため、単純な計算厚さではないことに注意!)と管台の計算厚さを求める。
②穴補強に最低限必要な面積Aを求める。
③強め材として算入される各部材の面積を求めその和を求める。
④ ②で求めた穴補強に最低限必要な面積と③で求めた強め材の面積の和とを比較し、後者が上回っていることを確認できればOK。下回っていた場合は寸法を見直し、十分な強め材の面積を確保する。
以上です。
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