外圧に対する計算はどうやってやる?

圧力容器は内側からの圧力に耐えるだけでなく、外側からの圧力がかかる場合もあります。そのような圧力を外圧といいます。また、内部の圧力が負圧(大気圧よりも低い)の場合は、大気圧が外側からのかかる形となり考慮が必要になります。外圧の計算は内圧の計算とは異なる計算の仕方があり、内圧の計算よりも少し厄介です。今回は外圧に対する計算の仕方を紹介いたします。

▼円筒胴の内圧に対する計算の仕方については以下を参照ください。

▼鏡板の内圧に対する計算の仕方については以下を参照ください。

外圧がかかるとどうなるか

内圧によって容器が破損する場合は、亀裂が生じ内部流体のエネルギーが一気に解き放たれて破裂が生じます。これはまだイメージがしやすいかと思いますが、一方の外圧に対する破損はどのようなものになるでしょうか。
外圧がかかった圧力容器はその外圧によって圧縮されます。その力に耐えられなくなった時、容器は座屈変形を起こして大きく凹んでしまいます。
このような座屈変形を起こさせないように、外圧に対する十分な強度をもたせた設計を行うことが重要です。
どのように検討をすればよいのか、円筒胴の場合と鏡板の場合に分けて、順番に見ていきましょう。

円筒胴の外圧に対する計算

円筒胴の外圧に対する計算はJIS B 8265の附属書Eに記されています。その手順は以下の通りです。

①外圧の計算にあたっては、まず計算厚さtを仮定してやる必要があります。計算厚さtを仮定後、L/DoDo/tを計算します。

②図E.9を参照して、L/DOを縦軸にとります。L/DOが50を超える場合は、50を、L/DOが0.05を下回る場合は0.05をとります。

③次に②で得られた点から水平に線を引き、①で得られたDo/tの曲線との交点を得ます。対応するDo/tがない場合は補間にて交点を得ます。そしてその交点から垂線を引き、Aの値を得ます。

a)Do/t≧10の場合
④円筒胴の材料に対応する図を図E.10から選び、横軸に③で得たAの値をとります。

⑤この点から垂線を引き、設計温度に対応する曲線との交点を得ます。設計温度に対応する曲線がない場合は、補間にて交点を得ます。Aの値が材料曲線のさらに右側にある場合は、右端から水平に材料曲線を延長し、交点を得ます。

⑥ ⑤で得た交点から水平に線を引き、図の左側の縦軸との交点からBの値を読み取ります。Aの値が材料曲線の左側にある場合はB=0.5EAとします。

⑦ ⑥で得られた点Bの値を用い、①で仮定したtに対する許容外圧Paを次の式を用いて計算します。

⑧ ⑦で得られたPaとPを比較してPa<Pならば、tの値を少し大きくして、同じ手順を繰り返し、Pa>Pを満足するtを計算します。

例題

以下の図のようなケースでの外圧計算を考えてみましょう。
本体側の圧力は-0.10MPa〜1.0MPa、ジャケット側の圧力は0.5MPaです。ジャケット側の流体の液頭圧は無視できるとした時、ジャケットに被われている箇所の円筒胴の外圧は以下の通りになります。

0.5(ジャケットの内圧)+0.1(本体の負圧)=0.6MPa

先の手順にのっとって計算していきます。


①まず、tを仮定します。今回はt=20mmとします。外径Doは2040mmになります。支持線の間の距離Lはジャケットエンド兼強め輪の中心から鏡板の1/3の高さまでになります。ジャケットエンドの厚みが30mmとすると、

L = 30/2 + 2200 + 2000 × 0.194/3 = 2603mm


となります。したがって、

Do/t =2040/20=102

L/Do=2603/2040=1.276


②L/Doを縦軸にとり平行に線を引きます。(Fig.2の1)

③Do/tとの交点を得ます。(Fig.2の2)
次に交点から垂線を引いて横軸との交点からAを得ます。(Fig.2の3)
今回のケースではA=0.001となります。
④JISの図E.10から円筒胴の材料に対応する図を選び横軸に③で求めたAの値をとります。今回のケースでは円筒胴の材質はSUS304なので、図E.10の(6) 304系ステンレス鋼を参照します。

⑤Aから垂線を引き(Fig.3の1)、設計温度に対応した曲線との交点を得ます。(Fig.3の2)
⑥交点から平行に線を引き、縦軸との交点からBを得ます。(Fig.3の3)
今回のケースではB=46となります。
⑦許容外圧Paを求めます。
 

Pa = 4Bt/3Do = 4 x 46 x 20 / (3 x 2040) = 0.601 MPa


⑧Pa>P=0.6MPaなので、t=20mmで問題ないことがわかりました。
支持線の間の距離外圧に対して胴を支持するとみなす線を支持線と呼び、その二つの支持線の距離のことをいいます。支持線とみなすことができるものは以下に挙げたものです。 (a) 鏡板(円すい形鏡板は除く。)については、鏡板のタンジェントラインから鏡板の深さの1/3の位置の円周線 (b) 強め輪の中心線(ただし強め輪とみなすには十分な断面二次モーメントを有している必要がある) (c) 円錐胴の端部(ただし支持線とみなすには強め輪が十分な断面二次モーメントを有している必要がある)

鏡板の外圧に対する計算

次に鏡板の外圧に対する計算についてです。鏡板の種類によって計算の仕方が異なります。順番に見ていきましょう。

(1) 全半球鏡板

全半球鏡板の計算の仕方はE4.3によります。

①計算板厚tを仮定し次の式からAの値を算出します。
② ①で得られたAの値を用いて、図E.9からBの値を求めます。求め方は円筒胴の外圧計算と同様です。

③ ②で得られたBの値を用いて、次の式から許容外圧Paを計算します。
④ ③で得られた許容外圧Paが設計圧力Pと比較し、Pa≧Pを満足していることを確認する。Pa<Pの場合、仮定したtの値を大きくして、条件を満たすまで繰り返します。

(2) 皿型鏡板

皿型鏡板の外圧に対する計算板厚は以下のいずれかの大きい方とします。

(a)内圧を保持する鏡板と見なし、Pを1.67倍としてE3.3から得られる厚さ。ただし鏡板に溶接継手がある場合は、溶接継手効率は1.0とします。

(b)Doを皿型鏡板中央部の外半径の2倍としてE4.3(球形胴の外圧に対する計算)より求めた厚さ。

(3) 半楕円鏡板

半楕円鏡板の外圧に対する計算板厚は以下のいずれかの大きい方とします。

(a)内圧を保持する鏡板と見なし、Pを1.67倍としてE3.4から得られる厚さ。ただし鏡板に溶接継手がある場合は、溶接継手効率は1.0とします。

(b)E4.3(球形胴の外圧に対する計算)と同じ手順でDoを2KoDoに読み替えて得られる計算厚さ。ここでKoは表E.4に示された値です。

さて今回例に挙げたケースで実際に計算をしてみましょう。

例題(再掲)

本体下側の鏡板の外側にジャケットが覆いかぶさっており、外圧を受けています。本体した鏡板が受ける最大の外圧は、円筒胴の外圧と同様で、0.6MPaとなります。
この鏡板は10%皿型鏡板なので、さきに述べた(2)の手順にのっとって検討します。
(a)内圧を保持する鏡板と見なし、Pを1.67倍としてE3.3から得られる厚さ。
ここでは計算は省略しますが、計算板厚は13.9mmとなります。

(b)Doを皿型鏡板中央部の外半径の2倍としてE4.3(球形胴の外圧に対する計算)より求めた厚さ。
円筒胴の計算ではDo/tやL/DoなどからAの値を読み取りますが、今回の場合はAの値はE4.3に記載の式から手計算にて算出します。
ここではt=24mmと仮定します。(この数値は最初はある程度のあたりをつけて決めるしかありません。今回の場合はあらかじめ計算を終わらせてから本文を執筆しているためいきなりこのような仮定となっています。)
tを仮定したのち、鏡板の呼び厚さと実際厚さを決めてやります。実際板厚は鏡板の成形時の減肉後の板厚です。今回は呼び板厚の85%を実際板厚として検討します。実際板厚が仮定の板厚tを下回らないように鏡板の呼び厚さを決めます。今回の場合は

24 / 0.85 =28.24mm


なので、呼び厚さは30mmとします。したがってAの値は以下のように計算ができます。(鏡板の板厚が30mmなのでRoの値は2030mmとなる

A = 0.25t/(2Ro) = 0.25 x 24 / (2 x2030) = 0.0014778


このA値を用いてE.10の図からB値51.5と得ます。(やり方は円筒胴の計算と同様です)

次に求められたB値からPaを計算します。

Pa = 2Bt/(2Ro) = 2 x 51.5 x 24 / (2 x 2030) = 0.6088 MPa


以上より、許容外圧は0.6MPaを上回っており、問題ないことが分かりました。

最後に(a)と(b)を比較して、計算板厚が大きい方を必要計算板厚として採用します。
今回の場合では(a) 13.9mm < (b) 24mmであるため、24mmが計算板厚となります。 

まとめ

簡単ですが、外圧に対する円筒胴と鏡板の計算の仕方を紹介しました。板厚を仮定して、強度が不十分なら再検討して、と試行錯誤が必要となるのが、めんどうですよね。最近では計算はプログラムを用いて行われていることも多いのではないかと思います。いちいち図を参照したりはされていないのかもしれませんが、やり方を知っておくことは大事なことです。もし手計算をされたことがなければ、一度挑戦してみることをお勧めします。

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