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鏡板の計算はどうやってやる?

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今回は鏡板の計算のやり方について紹介したいと思います。鏡板は円筒胴と同じく圧力容器の主要な構成部材の一つですので、計算の仕方は必ず押さえておきたいところです。円筒胴の計算の仕方の紹介の際と同じく、JISに基づいた計算の仕方を紹介いたします。ASMEも考え方は同様です。 ▼円筒胴の計算の仕方については以下を参照ください。 円筒胴の計算はどうやってやる? トコトンやさしい圧力容器の本 (B&Tブックス) [ 大原良友 ] 価格:1,650円(税込、送料無料) (2023/6/18時点) 圧力容器の構造と設計新版 JIS B 8265及びJIS B 8267 (JIS使い方シリーズ) [ 小林英男 ] 価格:5,060円(税込、送料無料) (2023/6/18時点) 鏡板の計算の式 鏡板の必要板厚を求める計算式はJIS B 8265 附属書Eに記されております。鏡板の形状により計算式は異なり、以下の通りとなります。 半楕円鏡板 P : 設計圧力(MPa),    D : 半だ円鏡板のだ円の内長径(mm),   σ a : 設計温度における材料の許容引張応力(MPa),    η : 溶接接手効率 K の値は以下の式によります。 皿型鏡板 P  : 設計圧力(MPa),     D  : 皿型鏡板のフランジ部内径(mm),   σ a  : 設計温度における材料の許容引張応力(MPa),    η  : 溶接接手効率 M の値は以下の式によります。 半球型鏡板 P  : 設計圧力(MPa),     Di  : 半球型鏡板の内径(mm),   σ a  : 設計温度における材料の許容引張応力(MPa),    η  : 溶接接手効率 次のようなケースで計算の仕方を見てみましょう。 Fig.1 検討ケース (検討ケース) ・本体設計圧力:1.0MPa ・本体内径:2000mm ・材質:SUS304 ・ジャケット部設計圧力:-0.1MPa ・鏡板形式:10%皿型鏡板 本体部には比重0.9の液体が満たされており、温度は220℃とする。 設計圧力の考え方 設計圧力の考え方は基本

円筒胴の計算はどうやってやる?

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今回は円筒胴の強度計算の仕方を説明します。円筒胴は圧力容器を構成する主要部品ですので、計算の仕方は押さえておきましょう。今回はJIS B 8265に基づいて計算方法を紹介しますが、JISは基本的にはASMEの計算方法に基づいており、ASMEでも考え方は同様です。 内圧に対する円筒胴の計算 本体胴の計算方法は JIS B 8265の附属書E に記載されています。円筒胴の必要な板厚を求める式は以下の通りです。 P : 設計内圧(MPa) Di : 胴の内径(mm) D o   : 胴の外径(mm) σ a : 設計温度における材料の許容引張応力(MPa) η : 溶接接手効率 蒸気の式はP≦0.385 σ a ηの場合に限ります。P>0.385 σ a ηの場合は別途適用する式があります。また、内径基準と外径基準のどちらの式を使うのかは、計算する胴部がどちら基準で作られているかによります。一般に板曲げで製作する胴は内径基準にすることが多いのに対して、パイプ材は外径基準で製作されています。(パイプ材は規格で外径寸法が規定されています) 設計内圧の考え方 設計内圧は取り得る最大の圧力を考慮する必要があります。例えば以下のようなケースを考えてみましょう。 Fig.1 検討ケース (検討ケース) ・本体設計圧力:1.0MPa ・本体内径:2000mm ・材質:SUS304 ・ジャケット部設計圧力:-0.1MPa 本体部には比重0.9の液体が満たされており、温度220℃とする。 ①負圧の考慮 まず円筒胴にかかる最大の圧力を考えます。円筒胴の内圧は1.0MPaです。加えてジャケットには-0.1MPaの負圧が作用しています。圧力が作用する向きはそれぞれFig.1に示したようになります。円筒胴部のジャケットに覆われている箇所は、本体内圧とジャケットの負圧が同一方向に作用しているため、ジャケットの内圧にさらに0.10MPaを加味してやる必要があります。 ②液頭圧の考慮 さらに

【本の感想】カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素

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今回は最近読んだ本の紹介をしたいと思います。 今回読んだ本は、『 カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア 』(著者:戸田 直樹/矢田部 隆志/塩沢 文朗)です。 タイトルの通り、カーボンニュートラル実現のために電化と水素、アンモニアが担う役割とその可能性について、記された一冊です。内容はややお堅い文章ですが、体系的にまとめられていて、個人的にはとてもためになりました。私のようなプラント系の会社にお勤めの方や、エネルギー関係に携わっている方々は一読の価値はあるかと思います。また、それ以外の方々にとっても、今後のエネルギーの大きな部分を担うかもしれない、新しいエネルギーについて、勉強しておくことは必ずどこかで役に立つと思います。さらには、水素・アンモニア関連の銘柄への株式投資を考えている方々にとっては、企業が新しいエネルギーの活用に向けてどのような開発を進めているのか、またどのような思惑をもって取り組んでいるのかを知るのに役立つと思います。就職活動中に学生さんにとっても、業界を丸ごと紹介されているので、競合他社も含めて研究ができるので、もってこいな一冊かと思います。 以下、ネタバレしすぎない程度に内容をご紹介します。 カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア [ 戸田直樹 ] 価格:2,310円(税込、送料無料) (2023/6/21時点) 電化の促進 本書のテーマは「 電化 」と「 水素・アンモニア 」の大きく二つになります。両者は

圧力容器の主な部材について

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この記事では圧力容器を構成する主なパーツについて、初めての方でもわかりやすいように、イラストを交えて解説いたします。圧力容器の部品は大きく分けて「 耐圧部 」と「 非耐圧部 」に分けられます。それぞれがどのような形状で、どのような役割を持っているのか、を押さえていただければと思います。 耐圧部の部品 耐圧部は内部に保有する圧力を受ける部分です。内部圧力に耐えられるよう、十分な強度を持った設計とする必要があり、そのために必要な肉厚などの計算方法は、各規格で細かく定められています。主な耐圧部材はFig.1に示したものになります。 Fig. 1 主な耐圧部材の名称 耐圧部の材料は、その容器の用途にもよりますが、内部の流体が腐食性のある場合は、SUS304などの ステンレス鋼 、激しい腐食性があるものはハステロイなどの特殊なニッケル合金なども用いられます。特に腐食性のないよう流体では一般的に 炭素鋼 が採用されます。炭素鋼はステンレス鋼などと比べて耐食性は劣りますが、①安価であること、②熱伝導度が優れていること、などのメリットがあります。反応容器などでは、内部流体に接する側だけがステンレスとなるように、炭素鋼の母材にステンレスの合わせ材を引っ付けた、 クラッド鋼 と呼ばれる材料を用いることもあります。 胴板・鏡板 胴板 :胴板(Shell)は圧力容器を構成する円筒胴の部分です。内部の圧力や、場合によっては外圧に対しても十分な強度を持った構造とする必要があります。 Fig. 2 鏡板の種類と形状 鏡板 :鏡板(Head)は胴板の両端をカバーするもので、様々な形状があります。主な種類としては「 半球型鏡板 」「 正半だ円型鏡板(2:1半だ円型鏡板) 」「 10%皿型鏡板 」などがあります。圧力容器は球形に近いほど内圧に対する強度に優れ

海外の圧力容器に関する規格は何がある?(その1)

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日本以外の海外での圧力容器の規格について2回に分けて紹介します。 各規格の詳細な内容についてまでは触れておりませんが、各国がどのような規格を採用しているのかを押さえていただけるかと思います。今回はASMEについてです。 ASME Boiler & Pressure Vessel Code ASME Boiler & Pressure Vessel Codeは(以下ASME BPVC)アメリカの機械学会であるASME(The American Society of Mechanical Engineers)が発行する規格でボイラーや圧力容器の設計・製造に関する基準を示しています。 2年に1度 改定が行われます。 ASMEは世界で幅広く知れ渡っており、圧力容器の共通言語のような感じでさえあります。 日本の規格であるJIS B 8265もASMEをベースにして発展してきた歴史があります。ですので基本的な考え方はほとんど同じです。また、アメリカの規格ではありますが、タイやインドネシアなど様々な国で広く用いられています。ASMEの細かな内容の紹介はおいおいすることとして、この記事ではどのような容器にASMEが適用されるのかについて解説します。 ASME BPVCの構成 ASME BPVCは全13のSectionとCode Caseから成っています。ここでは圧力容器の設計に関係するであろうSectionに絞ってリストアップしました。各Sectionの内容を全部覚えるのはとてもじゃないけれども無理なため、必要になった時に都度確認するので十分です。要所要所の内容を押さえておくのと、「コレコレについてはあのセクションのあの辺にのってたな~」な状態になれればGoodだと思います。 ASME BPVC Section.II - Materials 材料特性 Part A Ferrous Material Specifications 鉄系の材料の仕様についてまとめられています。 Part B Nonferrous Material Specifications 非鉄系の材料の仕様についてまとめられています。 Part C Specifications for Welding Rods, Electrodes, and Fi