圧力容器の主な部材について

この記事では圧力容器を構成する主なパーツについて、初めての方でもわかりやすいように、イラストを交えて解説いたします。圧力容器の部品は大きく分けて「耐圧部」と「非耐圧部」に分けられます。それぞれがどのような形状で、どのような役割を持っているのか、を押さえていただければと思います。

耐圧部の部品

耐圧部は内部に保有する圧力を受ける部分です。内部圧力に耐えられるよう、十分な強度を持った設計とする必要があり、そのために必要な肉厚などの計算方法は、各規格で細かく定められています。主な耐圧部材はFig.1に示したものになります。
Fig. 1 主な耐圧部材の名称
耐圧部の材料は、その容器の用途にもよりますが、内部の流体が腐食性のある場合は、SUS304などのステンレス鋼、激しい腐食性があるものはハステロイなどの特殊なニッケル合金なども用いられます。特に腐食性のないよう流体では一般的に炭素鋼が採用されます。炭素鋼はステンレス鋼などと比べて耐食性は劣りますが、①安価であること、②熱伝導度が優れていること、などのメリットがあります。反応容器などでは、内部流体に接する側だけがステンレスとなるように、炭素鋼の母材にステンレスの合わせ材を引っ付けた、クラッド鋼と呼ばれる材料を用いることもあります。

胴板・鏡板

胴板:胴板(Shell)は圧力容器を構成する円筒胴の部分です。内部の圧力や、場合によっては外圧に対しても十分な強度を持った構造とする必要があります。
Fig. 2 鏡板の種類と形状
鏡板:鏡板(Head)は胴板の両端をカバーするもので、様々な形状があります。主な種類としては「半球型鏡板」「正半だ円型鏡板(2:1半だ円型鏡板)」「10%皿型鏡板」などがあります。圧力容器は球形に近いほど内圧に対する強度に優れ、板厚を薄くすることができます。したがって3つの鏡板で必要とされる板厚は、半球型鏡板<正半だ円鏡板<10%皿型鏡板、の順になります。鏡板の製造方法は主に「プレス工法」と「スピニング工法」があり、それぞれの工法で、「熱間加工」と「冷間加工」があります。プレス加工とは、その名の通りプレスで板を鏡板の形に成形するものです。スピニング加工と比べて大きな力が必要となるため、一般的にスピニング加工よりも加工できる板厚が薄くなります。一方のスピニング加工は、板をプレスにてある程度の形状まで仕上げ、内面を押さえつけながら回転させて、外側からローラーで押し付けることよって、フランジ部を成形する方法です。プレス加工に比べて小さい力で成形が可能で、より分厚い鏡板も成形できます。また、冷間加工と熱間加工の違いは加工する際の温度です。冷間加工は常温で加工を行うのに対して、熱間加工は金属の再結晶温度以上まで加熱し、加工を行います。こうすることによって成形が容易になり、また完成品の靭性も高くなります。

強め輪:強め輪(Stiffener Ring):圧力容器に外圧がかかる場合に設けるもので、外圧による座屈を防ぐためのものです。補強リングともいいます。

ノズル

ノズル:ノズル(Nozzle)配管や計装機器などを接続するために、胴部や鏡板部に設けた分岐部のことです。Fig.3,4のように「ノズルネック」「フランジ」「補強板」「ボスカップリング」などからなります。
Fig.3 補強板付きのノズル
ノズルネック:ノズルネック(Nozzle Neck)はノズルの胴部です。
フランジ:フランジ(Flange)は配管や計装機器などと取り合うための接続箇所で、取り合う相手方のフランジとの間にガスケットを挟み込んで、ボルトナットで締めこむことで接続させます。フランジ形状は規格により定められており、様々な形状があります。
補強板:補強板(Reinforcement, Nozzle Pad)はノズルの開口部の周りに取り付けられた板です。ノズルの開口部は周囲に比べて、穴が開いていることにより合成が低下しています。それを補うために補強板を設けて、剛性を確保するためのものです。
Fig. 4 ボスカップリングタイプのノズル
ボスカップリング(Boss Coupling):一般に50A以下の小口径のノズルで採用されるノズルで、ノズルの付け根の部分にノズルネックよりもひと回り大きなボスを設けて、そこへノズルネックを差し込む(またはねじ込む)ことで取り付けるものです。小口径のノズルは少しの外力で変形してしまう恐れがあるため、補強するためにこの構造が採用されます。補強リブも同様の目的によるものです。
本体フランジ:本体フランジ(Shell Flange)は胴部に設けられたフランジです。本体胴を分割することができるため、開放が必要な容器(小型な機器など)や輸送の制限によって一体構造とできないもの(蒸留塔など)、製作の手順上分割が必要になるものなどに採用されることがあります。

ジャケット

ジャケットはFig.5 のように本体の外側にもう一つの胴を設け、その間に熱媒やスチームなどを流し込み、内部の流体を加熱したり、冷却させたりすることを目的としたものです。主に内部で反応を伴う撹拌槽などで用いられます。Fig.5の黄色く示した箇所が熱媒やスチームが流れる流路になっています。
Fig. 5 ジャケットの各部名称
ジャケットエンド:はジャケットの端部に設けるリングです。ノズルが設けられる箇所のジャケットを部分的に切り欠くために、ノズルオープニング(またはノズルエンド)が設けられます。ジャケットの内部にはジャケット内部の流体がショートパスして前週に流れないのを防ぐために、スパイラルバッフルが設けられます。スパイラルバッフルは耐圧部材ではありません。また、ジャケット部に半分に割ったコイルを取り付けるものもあり、これは半割コイルと呼びます。

まとめ

本記事では圧力容器の主要な部材である耐圧部材について紹介しました。これらの名称や役割は圧力容器の設計者にとっては基本の「き」なので、必ず押さえておく必要があります。
それぞれの計算の仕方などについては、また改めてご紹介したいと思います。
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まとめ

耐圧部:内部の圧力を受ける部材。圧力に対する十分な強度が必要

- 主な耐圧部品 -

  • 胴板、鏡板:本体の円筒胴とその両端をカバーするもの
  • ノズル:配管や計装機器などを接続するため分岐部。フランジや補強板、ボスカップリングなどからなる。
  • 本体フランジ:本体胴に設けるフランジ。分割が必要な場合に設ける。
  • 強め輪:外圧により容器が座屈するのを防ぐ。
  • ジャケット:本体の外側にもう一つの胴を設け、熱媒やスチームを流して、本体側の流体と熱交換させるための流路。

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