フランジの計算の仕方について解説!
今回の記事ではフランジの計算の仕方を解説いたします。フランジ継手は各国で規格化されており、規格フランジを使用する場合は原則、都度計算を行う必要はありません。一方で、規格外のフランジを用いる場合は必ず計算が必要になります。ではその計算はどのように行えばよいのか、JIS規格に基づいた計算の仕方を経験のない方でも分かりやすいように解説します。
フランジの計算において確認する点は以下になります。
①ボルトの必要断面積
②使用状態でフランジに生じる応力
③ガスケット締付時にフランジに生じる応力
④フランジの剛性
順番に説明します。
◆フランジ全般についても解説しております。以下を参照ください◆
ボルトの必要断面積の計算
まず使用状態とガスケット締付時のボルト荷重を計算します。$\displaystyle W_{m1}=H+H_{P}=\frac{\pi}{4}G^{2}P+2\pi bGmP$
$\displaystyle W_{m2}=\pi bGy$$W_{m1}$:使用状態での必要ボルト荷重(N)
$W_{m2}$:ガスケット締付時の必要ボルト荷重(N)
$H$:内圧によってフランジに作用する荷重(N)
$H_{P}$:気密を保つためにガスケットに作用する圧縮力(N)
$G$:ガスケット反力円の直径(mm)
$m$:ガスケット係数
$P$:内圧(MPa)
$b$:ガスケット座の有効幅(mm)
$y$:ガスケットの最小設計締付圧力(N/mm2)
使用状態での必要ボルト荷重$W_{m1}$は$H$と$H_{P}$の和です。$H$は直径$G$の円の断面積に作用する内圧 $P$がボルトを引っ張る荷重を意味します。$H_{P}$はガスケットの気密を保つために必要な圧縮力で、ガスケット係数$m$と内圧$P$を掛け合わせた面圧の2倍を、ガスケット座の有効幅$b$の面に作用させる際の荷重です。図示すると上の図のようになります。内圧がない状態で気密性を保つのに必要な最小の荷重に、内圧分を加算したのが$W_{m1}$になることがわかるかと思います。
ガスケット締付時の必要ボルト荷重$W_{m2}$はガスケットがフランジ座面に馴染むために必要な締付圧力を確保するために必要となる荷重です。内径$G$、幅$b$の面に最小設計締付圧力$y$を使用させるために必要な荷重となります。ここでの$b$はガスケット座の有効幅であり、座の形状によって、計算の仕方が異なります。詳しくはJISの付表を参照ください。
◆ガスケットについても解説しております。以下を参照ください◆
この式から分かるように、ボルト荷重はいずれも圧力に比例します。圧力が大きいほどより強く締め付けないといけないというのは、直感的にもピンとくるかと思います。
$W_{m1}$, $W_{m2}$を求めれば、許容引張応力からボルトに必要な最小の断面積が求められます。求める式は以下になります。
$\displaystyle A_{m2}=\frac{W_{m2}}{\sigma_{a}}$
$A_{m1}$:使用状態でのボルトの必要総有効断面積(mm2)
$A_{m2}$:ガスケット締付時のボルトの必要総有効断面積(mm2)
$\sigma_{b}$:設計温度におけるボルト材料の許容引張応力(N/mm2)
$\sigma_{a}$:常温におけるボルト材料の許容引張応力(N/mm2)
$A_{m1}$は使用状態での必要総有効断面積であるため、許容引張応力は設計温度での値を用いて計算します。一方で、$A_{m2}$はガスケット締付時の必要総有効断面積であるため、常温での許容引張応力を用います。必要ボルト荷重が大きいほどボルトの必要総有効断面積も大きくなることが式から分かります。
求めた$A_{m1}$, $A_{m2}$のうち大きい方の値よりも実際のボルト断面積が大きくなるようにする必要があります。圧力が高い場合は使用状態でのボルト荷重$W_{m1}$が大きくなり、$A_{m1}$が律速となりますが、低圧であったり、最小設計締付圧力の大きなガスケットの場合は$W_{m2}$が大きくなり、$A_{m2}$が律速となります。
使用状態でフランジに作用するモーメント
使用状態でのフランジに作用するモーメントは以下の式で求められます。$\displaystyle M_{0}=M_{D}+M_{G}+M_{T}$
$\displaystyle M_{G}=H_{G}h_{G}$
$\displaystyle M_{G}=H_{T}h_{T}$
$h_{D}$, $h_{G}$, $h_{T}$はモーメントアームでJIS B 8265の表G.1に規定されています。ルーズ形フランジのラップジョイントか、差し込み型か、一体型かによって計算式が異なります。
ガスケット締付時にフランジに作用するモーメント
$\displaystyle M_{g}=W_{g}\frac{(C-G)}{2}$ここで、$C$、$G$、$W_{g}$はそれぞれ以下の通り。
$C$:ボルト穴の中心円の直径(mm)$W_{g}$:ガスケット締付時のボルト荷重(N)で以下に示す式で計算されます。
$\displaystyle W_{g}=\frac{A_{m2}+A_{b}}{2}\sigma_{a}$
ただし$A_{m2}$はガスケット締付時のボルトの必要総有効断面積、$A_{b}$使用するボルトの総有効断面積、$\sigma_{a}$は常温におけるボルト材料の許容引張応力です。
$A_{m}$と$A_{b}$の平均に常温での許容引張応力を掛け合わせ、ボルト荷重$W_{g}$を算出しています。
フランジに生じる応力
フランジに生じる応力は使用状態とガスケット締付時の両方で計算し、いずれの場合でも発生応力が許容応力以下であること確認する必要があります。
フランジにハブがない、またはハブがあってもそれを考慮しない場合、周方向の応力のみ計算すればOKです。ハブを考慮する場合は、周方向に加えて径方向、ハブの軸方向の応力を計算します。これら全ての応力が許容応力以下であればOKです。応力の計算式はJISをご参照ください。
式を見れば分かりますが、応力はフランジに作用するモーメント$M$に比例し、フランジの板厚$t$の二乗に反比例します。つまり応力が大きくて許容値以内に収まらない場合は、モーメントを小さくするか板厚を大きくすることで応力を小さく抑えられます。
フランジの剛性
剛性指数とは、許容応力限界のみで設計されたフランジは、漏れを十分に制御できない可能性があります。この問題に対処するために、フランジの種類に応じて剛性基準が導入されました。剛性基準は2007 年版の ASME BPVC Section VIII - Division 1 から必須となりました。
JIS B 8265では2017年度版からフランジの剛性指数を検討することが求められました。
剛性指数$J$が1以下になることを確認する必要があります。
まとめ
②使用状態でフランジに生じる応力
③ガスケット締付時にフランジに生じる応力
④フランジの剛性
パラメータが変化すると応力がどのように変化するのかのイメージをつかんでおくことが大事です。
◆フランジ全般についても解説しております。以下を参照ください◆
◆ガスケットについても解説しております。以下を参照ください◆
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