ガスケットの種類と特徴について解説

今回はガスケットについて解説します。ガスケットは配管フランジに挟み込んで流体が漏れるのを防ぐシール材です。

ガスケットは主なものとして、ソフトガスケット、セミメタリックガスケット、メタルガスケットの三種類に分けられます。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

ソフトガスケット

ソフトガスケットはゴムや樹脂、黒鉛、無機・有機繊維などの非金属材料から構成されます。温度は300℃、圧力は3MPa程度以下の比較的低温・低圧な範囲で用いられます。代表的なのは、ジョイントシート、フッ素樹脂、膨張黒鉛ガスケットです。


・ジョイントシート:ゴムやガラス繊維、薬品を均一に混合させてシート状にしたものです。内部流体が腐食性や可燃性のない比較的低圧な流体の場合に使用できます。その名の通り、一枚の大きなシートから所定のサイズに切り抜いて成型して用いられます。昭和50年に使用が禁止されるまで、アスベストを含んだジョイントシートガスケットが普通に使用されていたそうです。今では使われることはまずないと思いますが、古い図面などを見るとアスベストを含有したガスケットが結構見られます。ちょっと調べれば各メーカーの相当品が簡単に分かりますので、機器の更新などの際にはそちらを使用すればよいかと思います。

(V/#6500, T/#1995など)


・黒鉛配合ガスケット:黒鉛とPTFEからなるシートガスケットで、耐熱性と耐薬品性に優れます。熱や時間を経ることによる劣化の原因であったゴムを全く使用していないため、増し締めが可能です。酸(高温の濃硫酸、濃硝酸等は除く)、弱アルカリ塩類水溶液や溶剤(アルコール、脂肪族系溶剤)や低温流体にも適用することができます。

(V/#GF300, T/#1155など)


・PTFEガスケット:PTFEでできたガスケットです。耐薬品性に非常に優れます。内部流体の汚染を嫌うプロセス(食品や医薬品など)に使用されることが多いです。PTFEは熱可塑性樹脂(高温下で力が加えられると変形して元に戻らなくなる樹脂)であるため、荷重を受け続けると連続的に形状を変化させる特徴があります。これをクリープ(コールドフロー)と呼びます。純PTFEのガスケット(V/#7010, T/#9007など)にはこの欠点があるため、原則として溝形フランジで使用することがメーカーにより示されています。このクリープの欠点を改良させたガスケットも存在します。(V/#7020, T/#9007-LCなど)


・PTFE包みガスケット:ジョイントシートや膨張黒鉛などをPTFEで接液部を被覆することで、

PTFE単体のガスケットの弾性と強度を向上させたガスケットです。PTFEガスケット同様、耐薬品性に優れ、汚染を嫌うプロセスに使用されることが多いです。PTFEの外径部を接着または縫製させたものもあります。負圧で運転する場合やフランジの面間が十分に確保できずに無理に取り付ける場合(後者は余りないかと思いますが。)はこの外径部を閉じたほうがよいです。

セミメタリックガスケット

セミメタリックガスケットはステンレス鋼などの金属と膨張黒鉛などの非金属を組み合わせたガスケットです。非金属のガスケットでは使用できないような高温・高圧条件下でも使用することができるのが特徴です。代表的なものとして、渦巻き型ガスケット、メタルジャケットガスケットなどがあります。


・渦巻き型ガスケット(Spiral Wound Gasket):V字型断面の金属製のフープと緩衝材(フィラー)を重ね合わせ、渦巻き状に巻き上げ、巻きはじめと終わりのフープをスポット溶接で重ね合わせて固定したものです。フープは一般的にはSUS304ですが、必要に応じてそのほかの金属に変更することも可能です。フィラーはノンアスベスト無機質紙や膨張黒鉛、PTFEなどが使用されます。渦巻きガスケットは高温・高圧で使用することができ、化学プラントで重宝されるほか、原子力プラントなどでも使用されます。渦巻きガスケットには内輪と外輪という、金属製のリングをつけることができます。これらは形状を保持するための補強材という役割を担っています。内外輪があるかないかによって、フランジのガスケット座面の形状も変わってきますので、注意が必要です。順番に見ていきましょう。

①内外輪なし(基本形)

内外輪なしの基本形は溝形フランジ(TG座)に適用が可能です。はめ込み型フランジ(MF座)にも使用できます。

②外輪付き

どのようなガスケット座面でも使用できますが、基本的には平面座(RF座)に適用するのがよいでしょう。


③内外輪付き

どのようなガスケット座面でも使用できますが、基本的には平面座(RF座)に適用するのがよいでしょう。


④内輪付き

はめ込み型フランジ(MF座)に適用が可能です。溝形フランジ(TG座)にも使用できます。


またガスケット本体の製作可能な最大・最小寸法や、製作可能なガスケットの幅、内外輪の幅の下限値、ガスケットの逃げ代とクリアランスなど、ガスケット製作上の制約や設計上の制約がいろいろとあります。本体フランジやマンホールなどで規格寸法から外れる任意の形状のガスケットを用いる際、これらに注意する必要があります。迷ったり、判断がつかない場合はガスケットメーカーへ相談するのがよいでしょう。


・メタルジャケットガスケット(Metal Jacket Gasket)

ノンアスベストクッション材などの外側を金属薄板で被覆したガスケットです。複雑な平面形状や巨大なものまで製作が可能なため、塔、槽類のほかにマルチパス型多管式熱交換器など幅広い用途に使用されます。


メタルガスケット

メタルガスケットはステンレス鋼などの金属でできたガスケットです。軟質ガスケットが使用できないような高温・高圧条件下でも使用することができるのが特徴です。


・金属平形/のこ歯形ガスケット

シール面にノコギリ状のギザギザが設けられた金属製のガスケットです。優れたシール性が特徴ですが、高い締め付け圧力が求められます。


ガスケット係数および最小設計締付圧力について

ガスケットにはその種類ごとに、ガスケット係数m(無次元数)と最小設計締付圧力 y(N/mm2)がJIS B 8265の表G.2によって定められており、各メーカーのカタログにも記載があります。

ガスケット係数とは有効締付圧力(内圧が作用している際にガスケットに加わる締付圧力のこと。ボルトの伸びによる締付圧力の減少分を差し引いたものとなっています。)と作用する圧力の比を表す値です。最小設計締付圧力とは、ガスケットがフランジ座面に馴染むのに必要な最小の締付圧力です。ガスケット係数と最小設計締付圧力はフランジの計算を行う際に用います。


まとめ


今回はガスケットの種類とその特徴について解説しました。ガスケットにはさまざまな種類がありますので設計条件(温度や圧力、内部の流体)に応じて選定が必要です。ガスケットメーカーのカタログをよく参照されることをおすすめします。

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