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胴や鏡板に設ける穴の検討はどうやってやる

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 本記事では圧力容器の胴や鏡板に設けるノズルなどの穴補強の検討の仕方について解説します。圧力容器の設計の経験のない方でも分かりやすいようにできるだけ簡単に説明しますので、是非ご覧ください。 穴補強の検討が必要な穴とは? 圧力容器にはノズルなどの穴が存在します。当然ながら穴が開いている部分は、ほかの穴が開いていない部分と比べて強度が劣ってしまいます。そのため、穴が開いていても十分な強度が確保できていること、もし強度が足りない場合は、補強を設けることで強度を持たせることが必要となります。では圧力容器に設けられる穴はすべて穴補強が必要なのか?と言われるとそうではありません。JIS B 8265では以下のような穴については穴補強が必要ないとされています。 ① 計算厚さが10mm以下 の胴、鏡板又は平板に設ける穴で、 直径89mm以下 の場合 ② 計算厚さが10mmを超える 胴、鏡板又は平板に設ける穴で、 直径61mm以下 の場合 上記はいずれも単独の穴(複数の穴が隣接していない)の場合で、円形以外の平板の場合は最小スパンの1/4以下の直系の穴、という規定があります。 穴補強に必要な強め材の最小面積は? 穴補強の考え方は、穴を横方向からの断面で見たときに、穴が開いている箇所に本来あったであろう胴や鏡板の断面積をほかで補おうという考え方です。 下の図をご覧ください。この図はノズルの穴を横から見た断面図です。肉厚 t の胴又は鏡板にノズルが設けられて穴が開いていることが分かります。穴によって失われた断面積は図の A の部分に該当します 。この A の断面積をほかの部材で補強してやる必要があります。 この A の断面積を式に表すと以下のようになります。(内圧に対する補強の場合) $$A = dt_{r}F+2t_{n}t_{r}F(1-f_{r1}) $$ d : 穴の内径(mm) t r : 胴又は鏡板の計算厚さ(mm) t n   : 管台の腐れ後の厚さ(mm) ...

管台(ノズル)の計算はどうやってする?

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 本記事では管台(ノズル)の計算の仕方について解説します。圧力容器の設計の経験のない方でも分かりやすいようにできるだけ簡単に説明しますので、是非ご覧ください。 ノズルに作用する力とは? 「 管台 」とは「圧力容器の胴、鏡板などに配管、計装品などを接続するために設けた分岐部」のこととされております。(JIS B 0190より引用)一般的には「ノズル」と呼ばれることの方が多い気がしますがJISなどでは基本的に管台と呼称されています。本記事では以後は「 ノズル 」と記載します。ノズルの一例の図を以下に示します。胴または鏡に取り付ける管のことを「ノズルネック」(または管台壁)といいます。その先端にはフランジなどが設けられ、外部の配管と取り合えるようにすることが多いです。 その設計を行うに当たって考慮しないといけないことはどのようなことでしょうか?まず、ノズルに作用する力について考えてみましょう。真っ先に考え付くのは「 内圧 」…①でしょう。圧力容器は内部に圧力を保持する容器であるため、その性質上基本的には内部からの圧力を受けます。内圧はノズルネックの内側から外側に作用します。 次に考え得るのは「 外圧 」…②でしょうか。こちらは内圧とは逆方向に作用する圧力です。ノズルネックの外径側から内側方向へ作用します。 また、ノズルはフランジなどを通じて外部の配管と接続したり、計器が取り付けられたりします。これらから作用される荷重もあります…③。これらの 外部荷重 によって胴や鏡板が変形するようなことがあってはなりませんので、適切に考慮する必要があります。この検討方法にはWRC107(バイラード(Bijlaard)法)といった手法を用いて検討することができます。 本記事では圧力に対する検討にのみ焦点を絞って解説したいと思います。(上記の①と②)というのも、国内の強制法規で計算書を提出する必要があるのは圧力に対するもののみであり、③のような外部荷重は含まれないためです。(もちろん適切な検討をすることはとても大事です。) 内圧に対する計算の仕方 内圧に対する計算の仕方は円筒胴の計算の仕方とほぼ同じです。 JIS B 8265の附属書E.2.2 の式によります。  ▼円筒胴の計算の仕方については以下を参照ください。 円筒胴の計算はどうやってやる? $\displaystyl...

ASMEのEdition, Code Case, Interpretationってなに?他

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本記事ではASME (American Society of Mechanical Engineers : 米国機械学会) が発行する規格であるBoiler & Pressure Vessel Code(以下ASME BPVC)に関する様々な用語について、解説したいと思います。 Editionってなに? Editionとは日本語で「版」のことです。一般の本でも最後の方のページに「第3版」とか「初版」とか書かれていますよね?それと同じでASME BPVCでも版があります。ASMEは1914年に最初のボイラー製造規格として、現在のSection I の一部に相当する部分が発行されました。それから幾度にもわたって改定が行われ、新しい規格の追加や分割・統合を行って現在の形に至りました。ASME BPVCは2011年までは3年に一回改定が行われてきました。そのたびに2011 Edition(版)のように規格が発行されるわけで、ASMEに則って製造を行うにはそのたびに最新版を購入する必要があります。(ちなみにASME BPVCは一冊に収まるようなものではなく、全てをそろえると31冊分にわたるそうです。)なお2013年からは2年に一回、7月に発行されるようになりました。発行されたら直ちに従わないといけない、というわけではなく、発行から6か月間の猶予期間が認められております。猶予期間の経過後は最新版の適用が強制的になります。 Addendaってなに? Addendaとは日本語で「付録」のことです。現在のEditionから新しいEditionが発行されるまでの間に、Code要求の改訂や追加を広く通知するために年一回発行されていました。これは2011年版までは3年に一回の改訂であり、次の版が発行されるまでに間隔が空くための措置でしたが、2013年版以降は2年に一回の改訂と短い間隔となったためにAddendaの発行は廃止されました。 Code Caseってなに? Code Caseとは既存の要求事項を明確にするために発行されるものです。既存のCodeで扱われていない新しい材料や構造について、Codeの改訂を待たずに、緊急に規定を作成する必要がある場合に発行されるものや、十分な実績データがないが便宜上特別に規定を...